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生存戦略

ひなたんと山岸と佐渡

きっと誰も好きじゃない。

フォトグラファーの高木美佑さんが出会い系サイトで出会った男性に写真を撮ってもらい、その体験を綴る連載がある。

 

『きっと誰も好きじゃない。』

http://wearetsk.com/miyu-takaki-001/

 

別れ際、出会ったばかりの男性に撮られた高木さんの写真を見ると不思議と健全で切実な印象を受ける。それから2人はどうなったのかなんてことはわからないけど、写真に残る高木さんの姿は、きっとうそじゃない。

 

サイトで出会ってほんとうに恋に落ちる人もいれば、暇つぶしにメールのやり取りをする人もいる。恋人への愛を確認するために、他の人と出会ってみたという友人もいる。目的はさまざまだけれど、少し前よりもずっと簡単に、見ず知らずの人に出会えてしまう時代になった。

 

 

わたしが初めて出会い系サイトを使ったのは、4月か5月か、それくらいだったとおもう。

正確には、出会い系サイトではなくてOB訪問のためのマッチングアプリだった。

就職活動のイベントに参加したときにほかの就活生に勧められたそのアプリを使うと、「学生に会いたい社会人」と「社会人に会いたい学生」が簡単に連絡を取れるようにできていた。

 

そこで3名の社会人に出会ってみたところ身元も分かるし安全にふだん自然には出会うことのなかった人と出会えるおもしろさを感じた。もちろん必要以上の連絡を取ることはなく、わたしは就職活動を終えることになった。

 

 

就職活動というのは、不思議なものだ。

いくつもの会社にエントリーをして、そのエントリーシートに自分はどういう人間でどんなことを考えていてどんな理由で御社に...とさまざまなことを記入する。

はじめは思い入れのなかった企業でも、エントリーシートを書いている間、面接の前、通過の連絡が来るたびに、その企業への思いが強くなっていく。

三次面接あたりであっさり落とされて、一晩落ち込むけれど案外簡単に立ち直ることができる。きっとそんなに好きじゃなかったんだ。

傷つくことに慣れてしまうと、感受性が死んでいく。

 

就職活動と出会い系は似ている。広く見れば就職活動も「出会い系」だと考えられる。というか、人生は出会い系だ。

 

就職活動が終わってから、いくつもの出会い系サイトを利用した。女性はお金がかからないし、ちやほやされるし、サイトによって利用者の色が違うこともおもしろい。

 

わたしはこれから、出会い系サイトを使って出会った男性たちの話を書いていきたいとおもう。一度しか会っていない人もいれば、何度か会った人もいる。出会いの形なんて、なんでもいいのかもしれない。

 

 

でも本当は、街角の書店の棚の前で反対から伸ばされた手に触れて、「気が合いそうだ。ちょっとお話ししませんか?」と誘われたかったな。

 

 

  

 

山岸