遥か彼方。
約40年、赤土と森に覆われたアフリカを、Nさんは旅していた。
日々、都市化している日本とは対極にある世界に惚れ込んでしまい、タンザニアに住むことになる。
自分がはまったタンザニアを、もっとたくさんの人に知ってもらいたくて旅行会社を始めた。
騙されたり、脅されたり、たくさんのことを経験しながら今までやってきた。
最近は、アフリカの中でも情勢が良い国が増えてきている。タンザニアもその一つで、旅好きの日本人が度々訪れるようになったそうだ。
Nさんはとても喜びながら、タンザニアを訪れる若者をインターンシップとして受け入れたり、たくさんの情報を提供したりして、タンザニア滞在をサポートしていた。
佐渡もNさんにお世話になっていた1人で、
「タンザニアに入るならあの会社のバスがいい」
「泊まる場所を提供することも可能だが、交通の便がいいホテルを紹介するのでそこの方がいいのではないか」
など、メールのみでのやり取りにもかかわらず、とても親切に教えてくれた。
やりとりの最後には、「タンザニアに着いたら、顔を出してください。」と言ってくださった。
今日からタンザニアに入る。
Nさんは、もういない。
オフィスで泡を吹いて倒れ、緊急手術の後に一時的に意識を回復したものの、翌朝目を覚ますことはなかったそうだ。
日本で手術を受けれいれば、もしかしたら助かったのかもしれない。
たらればの話はあまり好きではないが、どうしてもそう思ってしまう。
40年間過ごした国。日本よりも住んでいた期間は長いだろう。
Nさんは人生を全うしたのだろうか。
夢半ばだっただろうが、タンザニアで生きると決めたことに満足しているのだろうか。
いつか、きっと40年以上先のことになろうが、佐渡があちらの世界に行ったとき、偶然にも出会えれば伝えたいと思う。
「タンザニアは今もずっといい国です。」